加水分解した ECCOブーツ修理、新ソールで復活
2026/01/28
1. 運命の分かれ道「加水分解」との戦い
今回、T様からご相談いただいた最大の悩みは、靴底の**「加水分解(かすいぶんかい)」**でした。
ECCOの靴は、その圧倒的な履き心地の良さから世界中で愛されています。その秘密の多くは、ポリウレタン(PU)を使用したソールにあります。ダイレクトインジェクション製法で作られるポリウレタンソールは、軽量でクッション性に優れ、まるで雲の上を歩くような感覚を与えてくれます。
しかし、この優れた素材には唯一にして最大の弱点があります。それが「加水分解」です。 空気中の水分と反応し、数年経つとボロボロと崩れてしまう現象。久しぶりに下駄箱から出したお気に入りの靴が、一度歩いただけでソールが剥がれ落ちてしまった……という経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
「もう履けないのかも……」と諦めてしまいがちなこの状態ですが、私たちは**「オールソール交換(靴底全体の作り替え)」**という選択肢で、その絶望を希望へと変えます。
2. 伝統と革新の融合:新しいソールの選択
今回の修理で最もこだわったのは、元の履き心地を損なわず、かつ「二度と加水分解させない」という耐久性の追求です。
素材の進化:EVAスポンジの採用
新しいソールのベースには、高級ランニングシューズや介護靴などにも多用される**「EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)スポンジ」**を採用しました。
非加水分解性: ポリウレタンと違い、数年で崩れる心配がほとんどありません。
軽量性: 元のECCOの軽さを損なわないよう、密度を計算したスポンジを選定しました。
衝撃吸収: 歩行時の足への負担を和らげ、長時間の外出でも疲れにくい設計です。
接地面のこだわり:ペダラ柄ゴム入りソール
さらに、地面に触れるアウトソールには、信頼の**「ペダラ柄ゴム入りソール」**を組み合わせました。 このソールは、グリップ力(滑りにくさ)と耐摩耗性のバランスが非常に優れています。福岡の冬は、時に冷たい雨が降り、路面が滑りやすくなることもあります。そんなシーンでも、しっかりと地面を噛み、T様の足元を安全に支えてくれます。
3. デザインの再現:見た目はそのままに
修理において私たちが最も大切にしていることの一つが、**「元のデザインを崩さないこと」**です。
お気に入りの靴には、その靴にしかない「黄金比」があります。ヒールの高さが数ミリ変わるだけで、歩き方だけでなく、全身のシルエットやコーディネートの印象まで変わってしまいます。
ヒールの高さ: 0.1mm単位で調整し、お預かりした時のバランスを忠実に再現しました。
サイドシルエット: ソールの削り込みを丁寧に行い、ECCOらしいスッキリとした、都会的で洗練されたフォルムを復活させています。
質感の調和: 新しい素材でありながら、アッパー(革の部分)の質感に馴染むよう、仕上げの磨きをかけています。
パッと見ただけでは「新品に戻った」と錯覚するような、それでいて履くと「馴染んでいる」という、修理靴ならではの最高の状態を目指しました。
4. 福岡の冬、新しい一歩を
福岡の冬は、天神のイルミネーションや博多駅前のクリスマスマーケットなど、歩くのが楽しいイベントが目白押しですね。また、糸島まで少し足を伸ばしたり、太宰府を散策したりする際にも、足元の安心感は欠かせません。
今回新しくなったEVA+ゴムのソールは、アスファルトの上でも、石畳の上でも、その実力を発揮してくれます。
「あ、歩くのが楽しい。」
そう思っていただける瞬間こそが、私たち修理職人にとって最大の喜びです。お気に入りのコートに、この美しく蘇ったショートブーツを合わせて、ぜひ颯爽と街を歩いていただきたい。そんな風景を想像しながら、一針一針、一削り一削りに魂を込めました。
6. 修理のご依頼をお考えの皆様へ
もし、あなたの下駄箱に「底がボロボロになってしまったけれど、捨てられない思い出の一足」が眠っていたら、ぜひ一度私たちにご相談ください。
「これは直るのかな?」「費用はどれくらい?」といった些細な疑問でも構いません。福岡の地で、靴一筋に向き合ってきた職人が、一足一足の状態を見極め、最適なプランをご提案いたします。
私たちが提供する修理の価値
1:対話を通じた提案: お客様がその靴をどう履きたいか、お話を伺うことから始めます。
2:素材へのこだわり: 世界中から厳選した最高級のソール材を取り揃えています。
3:確かな技術: 伝統的な技法と最新の接着技術を駆使し、丈夫で美しい仕上がりをお約束します。

