いずみ靴店

【修理事例】Zamberlan(ザンバラン):兵庫の街から六甲の山嶺へ。Vibram 063で叶える「都市型ハイキング」の最適解

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【修理事例】Zamberlan(ザンバラン):兵庫の街から六甲の山嶺へ。Vibram 063で叶える「都市型ハイキング」の最適解

【修理事例】Zamberlan(ザンバラン):兵庫の街から六甲の山嶺へ。Vibram 063で叶える「都市型ハイキング」の最適解

2026/02/05

靴を修理することは、単に壊れた箇所を直す作業ではありません。それは、持ち主がその靴と共に歩んできた「過去」を慈しみ、これから歩む「未来」をより快適なものへとアップグレードするクリエイティブなプロセスです。

今回、兵庫県にお住まいのお客様よりお預かりしたのは、イタリアの名門ブランド**「Zamberlan(ザンバラン)」**の登山ブーツ。熟練の職人技によって、この名作がどのようにして現代のライフスタイルに即した姿で蘇ったのか。その全工程を詳しく解説いたします。

1. ザンバランという「北イタリアの誇り」

修理の詳細に入る前に、この靴が持つ背景について触れておく必要があります。1929年、イタリアのドロミテ山塊の麓で産声を上げたザンバランは、世界中の登山家から信頼を寄せられる老舗中の老舗です。

今回お預かりした一足も、ザンバランらしい重厚かつしなやかなフルグレインレザー(または上質なスエード)が使用されており、お客様が長年大切にケアされてきたことが一目でわかる、素晴らしいコンディションのアッパーでした。しかし、どれほど革を磨き、愛情を注いでも、地面と接し続ける「ソール」だけは物理的な摩耗と経年変化を避けることができません。

2. 修理のコンセプト:「街」と「山」をシームレスに繋ぐ

今回のお客様は、兵庫県にお住まいです。兵庫といえば、洗練された神戸の街並みがある一方で、背後には「六甲山系」という素晴らしい自然が広がっています。

ご依頼時のカウンセリングで伺ったのは、**「本格的な雪山登山というよりは、普段の街歩きや、週末の軽いハイキングを快適に楽しみたい」**という具体的なビジョンでした。

従来の登山靴のソールは、岩場でのグリップ力を重視するため非常に硬く、重いのが一般的です。しかし、それをそのままアスファルトの上で履き続けると、足裏への衝撃が強く、疲れやすくなってしまいます。そこで私たちは、「街でのエレガンス」と「山での走破性」を両立させるという難題に挑みました。

3. アウトソールの選択:信頼のVibram 063(イートン)

今回の修理の要となったのが、イタリアが誇るソールメーカー、ビブラム社の**「Vibram 063(通称:イートンソール)」**の採用です。

なぜVibram 063なのか?

通常、登山靴の修理には「Vibram 100(ユニットソール)」などのゴツゴツとしたブロックパターンが選ばれがちです。しかし、今回の「街歩き」という用途において、063は以下の圧倒的なメリットを発揮します。

スタッズ(円形突起)の魔法: イギリスの伝統的なダイナイトソールに似たデザインですが、ビブラム社のラバー配合はより柔軟で、濡れたタイルの上や石畳でも滑りにくい特性を持っています。

洗練されたシルエット: 横から見たときにソールが厚くなりすぎず、シュッとしたスマートな印象を与えます。これにより、カジュアルなハイキングウェアだけでなく、チノパンやデニムといったタウンユースのファッションにも違和感なく馴染みます。

驚異の耐久性: 耐摩耗性に優れた素材を使用しているため、硬いアスファルトを長時間歩いても減りが遅く、次の修理までのスパンを長く保つことができます。

4. ミッドソールの内部構造:クッション性の再構築

アウトソールが「タイヤ」なら、ミッドソールは「サスペンション」です。ここをどう作るかで、靴の履き心地は180度変わります。

① 合成ゴムによる「骨格」の形成

まず、アッパーとソールを強固に繋ぐために、耐久性の高い合成ゴムをウェルト部分に丁寧に縫い付けました。これにより、登山ブーツとしての「ねじれに対する強さ」を維持します。どれほどソフトな履き心地を目指しても、この骨格がしっかりしていなければ、長距離を歩いた際に足が疲れてしまいます。

② EVAスポンジの多層構造

そして、今回の快適性の秘密が**「EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)」**スポンジの採用です。

【技術ノート:EVAの優位性】 一般的なスニーカーや古い登山靴のミッドソールに使われる「ポリウレタン」は、数年で加水分解(ボロボロに崩れる現象)を起こしてしまいます。しかし、私たちが今回採用したEVAは、軽量で衝撃吸収性に優れているだけでなく、加水分解をほとんど起こさないという優れた特性を持っています。

職人が手作業でEVAの厚みをミリ単位で調整し、かかとから土踏まず、そしてつま先へと流れるような傾斜を作りました。これにより、着地時の衝撃をフワリと受け止め、次の一歩をスムーズに踏み出せる「バネ」のような推進力が生まれます。

5. 職人の手仕事:一針一針に宿る「魂」

ザンバランのような名靴を修理する際、私たちは常に「敬意」を持って道具を握ります。

解体とクリーニング: 古いソールを剥がす際、アッパーの革を傷つけないよう細心の注意を払います。長年の使用で固まった古い接着剤や汚れを徹底的に除去し、新しい素材が「吸い付く」ような下地を作ります。

1:プライマー処理(下地作り): 革とゴム、EVAという異なる性質の素材を完璧に密着させるため、それぞれの素材に適した特殊な薬品(プライマー)を塗布します。

2:圧着: 加熱して接着剤を活性化させた後、専用の強力なプレス機で圧着します。剥がれにくさはもちろん、接着面の美しさ(コバの仕上げ)が職人の腕の見せ所です。

3:フィニッシング: 最後に、専用のグラインダーでソールのエッジを整え、ザンバランの風格にふさわしい艶出しを行って完成です。

6. 修理を終えて:新しい冒険の始まり

完成したザンバランを手に取ると、そこには新品にはない**「深み」**があります。

お客様が何年もかけて自分の足の形に馴染ませたアッパーと、私たちが最新の技術でアップデートしたソール。この二つが融合したとき、その靴は世界でたった一足の、完璧な「自分専用機」へと進化するのです。

兵庫の洗練された街並みを闊歩し、そのまま六甲山の登山道へと足を踏み入れる。そんなアクティブで自由なライフスタイルを、この新しくなったザンバランが足元から強力にバックアップします。

7. あなたの大切な靴を、捨てないでください

「もう古いから」「ソールが剥がれてしまったから」と、靴箱の奥に眠らせている靴はありませんか?

靴修理は、資源を大切にするサステナブルな選択であると同時に、あなた自身の歴史を守る行為でもあります。私たち職人は、お客様の思い出が詰まった一足を、再び輝かせるための準備ができています。

「こんなに変わるんだ!」という驚き

「もっと早く相談すればよかった」という喜び

そんな体験を一人でも多くの方に届けるために、私たちは今日も工房で、一足一足に心を込めて向き合っています。

兵庫県のお客様、この度は素敵な冒険のパートナーを託していただき、本当にありがとうございました。新しくなったザンバランと共に、素晴らしい景色をたくさん見に行ってくださいね!

靴修理・メンテナンスのご相談はお気軽に。 あなたの思い出の靴に、再び命を吹き込みます。詳細はプロフィールのリンクからお問い合わせください。

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