クラークス ナタリー修理:機能性とデザインの融合
2026/01/20
1. クラークス・ナタリーという靴の魅力と「宿命」
クラークスのラインナップの中でも、デザートブーツやワラビーと並んで絶大な人気を誇るのが**「ナタリー」です。 最大の特徴は、つま先から踵(かかと)までソールが巻き上がった「ドライビングシューズ」のような独特のフォルム**にあります。このデザインが、足を優しく保護すると同時に、ナタリーならではの軽快なスタイルを作り出しています。
しかし、オリジナルのソールに使用されている「生ゴム(クレープソール)」には、いくつか避けられない弱点があります。
経年によるベタつき: 時間が経つとゴムが酸化し、アスファルトに張り付くようなベタつきが発生します。
汚れの吸着: クレープソールは柔軟な反面、地面のゴミや黒ずみを吸い込みやすく、見た目が損なわれやすい。
夏の熱に弱い: 真夏の高温になった路面では、ゴムが柔らかくなりすぎて摩耗が早まることがあります。
Y様からも「履き心地は気に入っているが、より長く、快適に履ける仕様にアップデートしたい」というご相談をいただきました。
3. 修理プロセスの詳細:職人のこだわり
① 土台作り:EVAスポンジによるウェッジソールの作成
まずは劣化した古いクレープソールを慎重に剥がし、靴のベースを整えます。 ナタリーはもともとフラットな履き心地が魅力ですが、歩行時の衝撃吸収性を高めるため、今回はEVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)スポンジを使用してウェッジ状のミッドソールを作成しました。
EVAスポンジは、以下の理由から修理素材として非常に優れています。
超軽量: 足への負担を劇的に軽減します。
適度な弾力: 歩行時の蹴り出しをサポートし、膝や腰への衝撃を和らげます。
加工性: 1mm単位で厚みを調整できるため、お客様の歩き癖に合わせた微調整が可能です。
② ソールの選択:Vibram(ビブラム)1030の採用
Y様のご要望である「耐久性とグリップ」を叶えるため、アウトソールにはVibram 1030をチョイスしました。
Vibram 1030は、アウトドアシーンでも定評のあるラバー素材で、濡れた路面でも滑りにくく、摩耗に非常に強いのが特徴です。それでいて、ナタリーのカジュアルな雰囲気を壊さないフラット系のデザインであるため、相性は抜群です。これで、これまでのクレープソールで感じていた「滑りやすさ」や「摩耗の早さ」という悩みから解放されます。
③ 難所:つま先とヒールの「本革」による再現
ここが今回の修理のハイライトです。 ナタリーのアイコンである「つま先と踵の巻き上げ」を、あえてゴムではなく**本革(レザー)**を使用して作り込みました。
なぜ本革なのか? それは、**「経年変化(エイジング)を楽しめるから」であり、かつ「成形が美しく決まるから」**です。 薄く漉いたレザーを、靴のカーブに合わせて丁寧に癖付けし、アッパーとソールを繋ぐように配置します。これにより、オリジナルに近いシルエットを再現しつつ、使い込むほどに革らしい味わいが増していく、世界に一足だけのカスタム・ナタリーが完成します。


