倉敷の街角で、一足の「相棒」が再び命を宿すまで。 ——Rossi(ロッシ)サイドゴアブーツ、オールソール交換の全記録
2026/01/13
1. 静かなる劣化、加水分解との対峙
今回、A様からご相談いただいたのは、ソールの劣化による**「加水分解」**でした。 加水分解とは、主にウレタン素材などが空気中の水分や熱と反応し、内部からボロボロに崩れてしまう現象です。これは避けることのできない「時間の宿命」とも言えます。
A様のRossiは、ソールがベタつき、一部が欠け落ちてしまっている状態でした。「長年、どこへ行くにも一緒だったんだ」と語るA様のお言葉通り、その摩耗具合からは、このブーツがいかにハードな環境を共に歩んできたかが伺い知れます。仕事、休日、雨の日も風の日も、A様の足元を支え続けてきたのでしょう。
しかし、アッパー(甲革)の状態は、丁寧にお手入れされていたおかげで、素晴らしいヴィンテージの風合いを保っていました。 「ソールは寿命だが、革は生きている」。 私たちは、この魂の宿ったアッパーを活かし、再び10年、20年と歩める「最強の相棒」へと再生させることを決意しました。
2. 修理工程の真髄:古きを脱ぎ捨て、骨格を組み直す
修理は、外科手術のような精密さと、彫刻のような大胆さを必要とします。
劣化したソールの除去
まず、加水分解して粘り気が出てしまった古いソールを、一つひとつ丁寧に取り除いていきます。アッパーの革を傷つけないよう、刃を入れる角度を微調整しながらの繊細な作業です。古いボンドや劣化した素材を完全に除去し、真っさらな「基礎」の状態に戻します。
EVAスポンジによるミッドソールの構築
次に、新たなクッション材としてEVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)スポンジを採用しました。 今回のテーマは、A様の「ハードな使い方」に耐えうる実用性です。EVAは非常に軽量でありながら、耐候性・弾力性に優れ、長時間の歩行でも疲れにくいという特性を持っています。このEVAをミッドソール(中底とアウトソールの間の層)として配置することで、歩行時の衝撃を吸収する「粘り」を持たせました。
伝統の「マッケイ縫い」による固定
ここが職人の腕の見せ所です。 新しいミッドソールを、マッケイ縫いという伝統的な技法で、アッパーおよび中底とダイレクトに縫い合わせます。 マッケイ縫いの最大の利点は、ソールの返り(屈曲性)が非常に良くなること。そして、構造がシンプルになるため、ブーツ全体の軽量化にも繋がります。一針一針、太い糸が革を貫くたびに、バラバラだったパーツが一つの「靴」として再び結束していく。その手応えを指先に感じながら、魂を込めて縫い上げました。
3. 至高の仕上げ:Vibram(ビブラム)1136ソールの輝き
そして最後に選んだのが、世界中の靴愛好家から絶対的な信頼を寄せられる、イタリアの名門**Vibram社の「1136ソール」**です。
通称「ユニットソール」とも呼ばれるこのソールは、登山靴の流れを汲むラグパターン(凹凸)が特徴です。
圧倒的なグリップ力: 濡れた路面や荒れた地面でも、地面をしっかりと掴みます。
高い耐摩耗性: 硬すぎず柔らかすぎない絶妙な配合のラバーにより、驚くほど長持ちします。
武骨な美しさ: サイドゴアブーツのスマートな印象に、1136のタフなボリューム感が加わることで、独特の「大人なワーク感」が生まれます。
このソールを装着し、エッジを美しく整え、最後にアッパーを最高級のクリームで磨き上げます。すると、先ほどまで「修理待ち」だったブーツが、まるで戦場から帰還して新しい鎧を纏った騎士のように、力強い輝きを取り戻しました。
4. 「ものを大切にする」という文化を、倉敷から
A様、この度は大切な相棒の修理をお任せいただき、本当にありがとうございました。 生まれ変わったRossiは、かつての状態よりもさらに堅牢に、そして歩きやすく進化しています。
今の時代、新しい靴を買うのは簡単です。しかし、自分の足の形に馴染み、共に歴史を刻んできた一足を直して履き続けることには、何物にも代えがたい「豊かさ」があると感じています。 このRossiが、また倉敷の美しい街並みを、そしてA様の人生の歩みを、力強く支えていくことを願ってやみません。
どうぞ、これからまた「ガシガシ」と履き倒してください。 傷がついたら、それがまた新しい思い出になります。そしていつかまたソールが減った時には、私たちがいつでもここでお待ちしております。
「靴を直すことは、思い出を磨くこと。」 私たちはこれからも、倉敷の靴職人として、皆様の足元に誠実に向き合い続けます。
修理詳細まとめ
ブランド: Rossi(ロッシ) / サイドゴアブーツ
症状: 加水分解、ソール劣化、摩耗
修理内容: オールソール交換(全底張り替え)
使用素材: * EVAスポンジ(ミッドソール)
Vibram #1136(アウトソール)
製法: マッケイ縫い
産地: 岡山県倉敷市
🏷️ ハッシュタグ
#Rossi #ロッシ #サイドゴアブーツ #ブーツ修理 #加水分解 #オールソール交換 #倉敷市 #靴修理 #靴職人 #手作業 #職人技 #靴の寿命延長 #EVAスポンジ #マッケイ縫い #Vibramソール #ビブラムソール #耐久性 #ハードユース #ヴィンテージブーツ #ファッション #長持ち #お手入れ #ブーツ愛 #サステナブル #持続可能性 #お気に入り #日常の相棒 #大切に #リペア #再生 #ものを大切に #職人の日常 #倉敷工房 #エイジングケア #経年変化 #足元倶楽部 #愛用の一足

