【修理実績】NIKE エアジョーダン1 ゴルフシューズの宿命を「オパンケ縫い」で克服する
2025/12/29
1. 華やかな外見に隠された「フェイクステッチ」の真実
エアジョーダン1は、バスケットボールの歴史を塗り替えた伝説的なモデルです。そのデザインをゴルフ仕様にアップデートした本モデルは、コース上でも圧倒的な存在感を放ちます。
しかし、修理のためにソールを詳しく診断・分解してみると、驚くべき事実が浮かび上がりました。
ソールの側面に整然と並んでいる「縫い目(ステッチ)」。 一見すると、アッパー(甲革)とソールを強固に繋ぎ合わせているように見えますが、実はこれ、**「フェイクステッチ」**なのです。
つまり、実際には糸で縫い付けられているわけではなく、装飾として型押しされているか、溝に糸が置かれているだけで、実質的な固定は**「ボンドによる接着のみ」**で行われています。
通常のスニーカーとして街中を歩く分には、現代の接着技術でも十分な強度は保てるでしょう。しかし、これが「ゴルフシューズ」となると話は別です。
2. なぜゴルフシューズに「接着のみ」は危険なのか
ゴルフというスポーツは、他のスポーツと比較しても足元への負荷が非常に特殊です。
スイングの瞬間、足元には体重の数倍もの負荷がかかります。特に右打ちの方であれば、バックスイングからインパクト、そしてフォローにかけて、左足の外側と右足の内側には強烈な**「横方向の力(ラテラル・トルク)」**が発生します。
接着剤は「垂直に剥がす力」には比較的強いのですが、「横にずれる力」に対しては、経年劣化や水分(朝露や雨)、芝の抵抗が重なることで、徐々にその粘り強さを失っていきます。
S様からお預かりしたAJ1も、まさにそのスイング時の負荷に耐えきれず、サイドからゆっくりと剥離が始まっていました。この状態では、スイングの軸がブレるだけでなく、プレー中の浸水や、最悪の場合はソールが完全に脱落して怪我につながる恐れもあります。
3. 解決策:伝統と技術の融合「オパンケ縫い」
「接着がダメなら、物理的に縫い合わせればいい」 言葉にするのは簡単ですが、厚みのあるカップソールとアッパーを、しかも側面から縫い合わせるには、特殊な設備と高度な技術が必要です。
そこで今回、いずみ靴店が提案・実施したのが**「オパンケ縫い」**による補強です。
オパンケ縫いとは?
オパンケ縫い(サイドマッコイ)とは、専用の「サイドマッコイミシン(オパンケミシン)」を使用し、ソールの側面からアッパーを貫通させて直接縫い付ける製法です。
古いボンドの除去と再接着: まずは剥がれた箇所の古い接着剤を丁寧にクリーニングし、最新の強力なポリウレタン系接着剤を使用して再度圧着します。
オパンケミシンによる縫製: 接着が安定した後、いよいよミシンの出番です。フェイクステッチが施されていた溝に合わせ、本物の太い糸を打ち込んでいきます。
この工程により、アッパーとソールは「ボンドという化学的な結合」に加え、「糸という物理的な結合」で一体化します。
5. 店主より:S様へ、そして全国のゴルファーの皆様へ
東京都のS様、この度は大切なシューズを倉敷の当店にお任せいただき、本当にありがとうございました。
お気に入りのシューズを履いてコースに出ることは、スコアアップと同じくらい、あるいはそれ以上にゴルフの楽しみを豊かにしてくれるものです。しかし、足元に不安を抱えたままでは、最高のパフォーマンスは発揮できません。
今回の修理で、このAJ1は「ただのレプリカ」から、過酷なラウンドにも耐えうる「真のプロフェッショナル・ギア」へと進化しました。
どうぞ、これからはソールの剥がれを気にすることなく、最後の一振りまで安心してプレーに集中してください。
倉敷の地より、S様の素晴らしいゴルフライフを応援しております。
修理詳細
モデル: NIKE Air Jordan 1 Golf
修理内容: 底剥がれ再接着 + 側面オパンケ縫い補強
施工店: いずみ靴店(岡山県倉敷市)
#いずみ靴店 #倉敷市 #東京都 #NIKE #ナイキ #AJ1 #エアジョーダン1 #ゴルフシューズ #底剥がれ #オパンケ縫い #靴修理 #スニーカー修理 #スニーカーカスタム #ゴルフ好きな人と繋がりたい #ジョーダンゴルフ #職人技

