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【職人レポート】Timberland(ティンバーランド)フィールドブーツ|履き口スポンジの本革張り替え修理

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【職人レポート】Timberland(ティンバーランド)フィールドブーツ|履き口スポンジの本革張り替え修理

【職人レポート】Timberland(ティンバーランド)フィールドブーツ|履き口スポンジの本革張り替え修理

2025/12/28

ストリートファッションのアイコンであり、タフなアウトドアシーンでも愛され続けるTimberland(ティンバーランド)。中でも「フィールドブーツ」は、その堅牢な佇まいと優れたデザイン性で、世代を問わず支持される名作です。

しかし、どんなに頑丈なブーツでも、避けて通れないのが「素材の寿命」です。今回、新潟県のT様より、履き口部分の劣化に関する修理のご相談をいただきました。

1. 診断:合成皮革を襲う「加水分解」の悩み

お預かりしたブーツを確認すると、履き口(足首に当たるクッション部分)の表面がボロボロと剥がれ落ちる状態になっていました。

これは、多くの既製品に使用されている**合成皮革(PUレザー)特有の「加水分解」**という現象です。 合成皮革は、空気中の水分や湿気と反応して化学分解を起こし、製造から数年が経過するとベタつきや剥がれが生じてしまいます。特に新潟県のような湿度の変化がある地域では、保管状況に気をつけていても避けられない宿命とも言えます。

せっかくのアッパー(本体の革)やソールがしっかりしていても、履き口がボロボロでは、脱ぎ履きの際に靴下が汚れたり、見た目の清潔感が損なわれたりしてしまいます。そこで今回は、二度と加水分解が起きないよう、「本革(天然皮革)」への張り替えをご提案しました。

2. 修理の工程:分解と再構築のプロセス

今回の修理は、単に上から布を貼るような応急処置ではありません。一度バラバラに解体し、構造から作り直す本格的な作業です。

① 慎重な分解作業

まず、靴本体と履き口のパーツを繋いでいるステッチをすべて解きます。 ティンバーランドのブーツは非常に強固に作られているため、分解には細心の注意が必要です。スポンジ部分を取り出し、劣化した合成皮革の表皮を丁寧に取り除きます。

② 本革への素材変更:耐久性と質感の追求

新しく使用する素材は、耐久性に優れたブラックの本革です。 合成皮革は薄い樹脂の膜ですが、本革は繊維が緻密に絡み合った天然素材。これにより、以下のメリットが生まれます。

圧倒的な耐久性: 今後、加水分解でボロボロになることはありません。

足馴染みの良さ: 本革特有の柔軟性があり、履き込むほどに足首に馴染みます。

高級感: 天然素材ならではのシボ感と光沢が、ブーツ全体の質感を格上げします。

③ スポンジのラッピングと成形

取り出したスポンジに、新しい本革をシワが寄らないよう均一に貼り付けていきます。 この時、本革にある程度の厚みを持たせることで、履き口に「しっかりとしたボリューム感」を持たせました。これにより、足首を包み込むホールド感が向上し、歩行時の安定感も高まります。

3. 技術的なこだわり:デザインの再現と機能の優先

オリジナルの履き口には、スポンジの中央にデザイン的な「縫い目(ライン)」が入っていました。 この意匠を完全に再現するには、特殊な大型のフラットミシンや、立体成形用の金型が必要となります。当店の設備である「八方ミシン」や通常のポストミシンでは、この「曲面上への完璧な直線縫い」を完全にコピーすることは物理的に非常に困難です。

そのため、今回は**「デザインのイメージを維持しつつ、実用性と耐久性を最優先する」**という方針で仕上げました。 中央の縫い目はあくまでオマージュとしての表現に留め、それよりも「剥がれないこと」「強固に固定すること」に全神経を注いでいます。

仕上げの縫製には、靴修理の万能選手である**「八方ミシン」**を使用しました。 八方ミシンは、その名の通り360度どの方向にも縫い進めることができる特殊なミシンです。ブーツのような立体的な構造物でも、奥まで針を届かせ、元々の縫い穴をできる限り追いながら、本体と履き口を一体化させていきます。

いずみ靴店

お客様の靴に込められた思い出や愛着をしっかりと受け止めながら、心を込めて修理を行っております。一足一足に真心を込めた作業を通じて、思い出の詰まった大切な靴が持つ新たな一歩をお手伝いいたします。

いずみ靴店

〒713-8121
岡山県倉敷市玉島阿賀崎2丁目6−46

086-526-3398

※お電話のお問い合わせは10:30~15:30の間にご連絡をお願いいたします。
基本的にはお問い合わせフォームへご連絡をお願いいたします。

4. 完成:一生モノの相棒へと進化したフィールドブーツ

完成したティンバーランド・フィールドブーツは、見た目の重厚感が以前よりも増し、より「プロフェッショナルな道具」としての風格を漂わせるようになりました。

【修理のポイント】

本革仕様: 加水分解の不安を解消。

厚みの向上: 本革の肉厚さにより、足当たりがソフトかつ強固に。

堅牢な縫製: 八方ミシンによる力強いステッチ。

T様、この度は遠方よりご依頼いただき、本当にありがとうございました。 新潟の厳しい冬の道でも、この新しい履き口がしっかりとT様の足元をサポートしてくれるはずです。本革ですので、時々クリームで保湿してあげると、さらに味わい深い経年変化を楽しんでいただけます。

5. 店主より:履き口の劣化でお悩みの方へ

ティンバーランドに限らず、ダナーやレッドウィング、あるいはスポーツブランドのスニーカーなどでも、履き口の劣化は多い悩みです。 「お気に入りだけど、ボロボロ落ちるのが嫌で履かなくなった」という靴があれば、ぜひ一度いずみ靴店にご相談ください。

本革で張り替えることで、それは単なる修理ではなく、**「アップグレード」**になります。 私たちは、お客様の思い出が詰まった一足を、再び誇りを持って履ける状態にすることをお約束します。

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