再生の記録】NIKE エア・ジョーダン1.5 × Vibram #4014|スニーカーを「一生モノ」のブーツへ昇華させるカスタムオールソール
2025/12/02
【再生の記録】NIKE エア・ジョーダン1.5 × Vibram #4014|スニーカーを「一生モノ」のブーツへ昇華させるカスタムオールソール
プロローグ:総社市・M様との出会い、そして伝説の一足
岡山県倉敷市にある「いずみ靴店」。日々、多くの革靴やブーツが持ち込まれる当店のカウンターに、ある日、一足の個性的なスニーカーが置かれました。
ご依頼主は、総社市からお越しのM様。 持ち込まれたのは、スニーカーファンならずともその名を知る名作、**NIKE AIR JORDAN 1.5(ナイキ エア・ジョーダン1.5)**です。
「ジョーダン1.5」というモデル名を聞いてピンとくる方は、かなりのスニーカー通と言えるでしょう。これは、伝説のエア・ジョーダン1のアッパー(甲部分のデザイン)に、エア・ジョーダン2のツーリング(ソールユニット)を融合させたハイブリッドモデル。マイケル・ジョーダン本人が怪我からの復帰時期に着用していたテストサンプルを起源とする、通称「The Return」とも呼ばれるストーリー性の高い一足です。
M様にとって、このシューズは単なるファッションアイテムではなく、数々の思い出と共に歩んできた大切な相棒なのでしょう。しかし、長年の愛用により、その足元は悲鳴を上げていました。
第1章:スニーカー修理の最大の壁「加水分解」と「カップソール」
M様のジョーダンを拝見すると、ソール全体がかなりくたびれている状態でした。 スニーカー、特にハイテクスニーカーやバッシュにおいて避けられない宿命、それがソールの劣化です。ウレタン素材などが経年によりボロボロと崩れてしまう「加水分解」や、摩耗による単純なすり減り。
M様のご要望は**「オールソール交換修理」**。つまり、靴底をすべて新しく作り直してほしいというものです。
ここで、私たち修理職人が直面する大きな壁があります。それは、**「純正のカップソールは手に入らない」**という事実です。
ナイキをはじめとするスニーカーのソールは、メーカーが保有する独自の金型で成形された「カップソール(足を包み込むような形状の底)」が使用されています。これらの純正パーツは市場に出回ることがなく、修理店が入手することは不可能です。 一般的な修理店であれば、「純正パーツがないので修理できません」とお断りせざるを得ないケースかもしれません。
しかし、いずみ靴店では違います。 「純正に戻せないなら、より強く、よりカッコよく、世界に一つのカスタムシューズに進化させればいい」 それが当店の提案する「スニーカー・カスタムオールソール」です。
第2章:カスタムの設計図を描く
純正のソールが使えない以上、私たちは革靴やブーツの製法を応用して、新しいソールを一から構築する必要があります。
M様とのカウンセリングの結果、今回は単なる機能回復にとどまらず、見た目の印象も履き心地もガラリと変える、大胆な「ブラッシュアップ」を行うことになりました。
目指すスタイルは、「スニーカーとワークブーツの融合」。 軽快なバスケットシューズのスタイルを保ちつつ、レッドウィングのような堅牢さと重厚感をプラスする。そんなカスタムプランが固まりました。
今回採用するメインの部材は、イタリアが誇るソールメーカー、Vibram(ビブラム)社の**「#4014 クリスティソール(白)」**です。
第3章:職人の技が光る「側面処理」と「縫い」の技術
ここからは、実際の修理工程における技術的なポイントを詳しく解説していきます。スニーカーをブーツのような製法で作り直すには、高度な技術と工夫が必要です。
1. 接着跡を隠す「革の側面処理」
まず、古いソールを全て剥がし取ります。すると、アッパー(本体)の側面には、元のカップソールが接着されていた跡がくっきりと残ってしまいます。カップソールはアッパーを巻き込むように接着されているため、平らなソールをただ貼るだけでは、この接着跡が露出し、非常に見栄えが悪くなってしまいます。
そこで行うのが、**「革の巻き付け処理」**です。 アッパーの側面に、靴の雰囲気に合わせた上質な革を帯状に貼り付けます。これにより、古い接着剤の跡を隠すと同時に、スニーカーに「革靴のような高級感」と「重厚感」を与えます。これは単なる目隠しではなく、デザインの一部として機能させる重要な工程です。
この革パーツを固定するために、**「オパンケ縫い」**と呼ばれる技法を用いることもあります。アッパーのサイドからソールに向かって斜めに縫いかけることで、物理的な結合強度を高め、剥がれを防止するのです。
2. ミッドソールの設置と「マッケイ縫い」
次に、靴の土台となる「ミッドソール」を取り付けます。今回は薄手のラバーミッドソールを選択しました。 このミッドソールとアッパーを固定するために採用するのが**「マッケイ縫い」**です。
マッケイ製法とは、アッパー、中底、そしてミッドソールを一度に貫通させて縫い合わせるイタリア発祥の伝統的な技法です。 スニーカーの多くは接着剤のみで底付けされていますが、ここに縫いをかけることで、耐久性は飛躍的に向上します。長期間履いても「底が剥がれる」というトラブルから解放されるのです。
この「側面処理」と「マッケイ縫い」の下準備があって初めて、アウトソールを貼る準備が整います。
第4章:Vibram #4014がもたらす機能美と耐久性
いよいよ、地面に接するアウトソール、Vibram #4014の装着です。
Vibram #4014とは?
レッドウィングのアイリッシュセッターなどに純正採用されていることで有名な、通称「ホワイトソール」「トラクショントレッドソール」です。 このソールの特徴は以下の通りです。
軽量かつ高いクッション性: 発泡ラバー素材を使用しているため、見た目のボリューム感に反して非常に軽量です。また、クッション性に優れており、長時間の歩行でも足が疲れにくいのが特徴です。元々がバッシュであるエア・ジョーダンとの相性も抜群です。
優れたグリップ力: 波状のパターンが刻まれたフラットな底面は、アスファルトの上でもしっかりとグリップし、安定した歩行をサポートします。
カジュアルでラギッドなルックス: 真っ白な厚みのあるソールは、足元に強烈なインパクトを与えます。スポーティーな印象から、一気に「ラギッド(無骨)」なワークテイストへと変貌させます。
この#4014を、丁寧に縫い付けたミッドソールに圧着します。白く輝くソールが、使い込まれたジョーダンのアッパーとコントラストを描き、新たな生命を吹き込みます。
第5章:完成、そして「ごつい感じ」への進化
すべての工程を終え、M様のエア・ジョーダン1.5が生まれ変わりました。
修理前、くたびれて元気がなかった姿はもうありません。 側面に巻かれた革が全体を引き締め、その下には圧倒的な存在感を放つVibram #4014が鎮座しています。
手に持った瞬間、そして足を入れた瞬間に分かる違い。 純正のエア・クッションのフワフワした感覚とはまた違う、大地をしっかりと踏みしめるような安定感。それでいて、スニーカーとしての軽快さは損なわれていません。
M様がおっしゃった**「ごつい感じ」**。 これこそが、このカスタムの真骨頂です。華奢なスニーカーが、タフなブーツへとビルドアップされたような感覚。 「耐久性のあるものへブラッシュアップしたい」というご要望に対し、素材選びから製法に至るまで、プロとしての最適解を出せたのではないかと自負しております。
第6章:メンテナンスと今後の楽しみ方
このカスタムの素晴らしい点は、**「修理が可能になった」**ということに尽きます。
通常のスニーカーはソールがダメになれば寿命ですが、このマッケイ製法+Vibram仕様にカスタムしたことで、今後はアウトソール(白い部分)が減ってきたら、そこだけを張り替えることが可能になります。 つまり、M様のエア・ジョーダンは、使い捨てのスニーカーから、**「直しながら一生履き続けられる靴」**へと進化したのです。
白いソールは汚れが目立つかもしれませんが、それもまた「味」。ガシガシ履き込んで、汚れや傷が刻まれるほどに、M様だけのヴィンテージとしての風格が増していくことでしょう。
エピローグ:M様からの喜びの声
お引き渡しの際、生まれ変わった愛靴を手にしたM様の表情が緩んだのを拝見し、私たちも安堵いたしました。 「気に入った」というシンプルですが最高のお言葉。職人冥利に尽きる瞬間です。
元のデザインを尊重しつつ、機能性と耐久性を付加し、全く新しい魅力を引き出す。それが、いずみ靴店が目指す「スニーカー・カスタム」の在り方です。
総社市からわざわざ足を運んでくださったM様、この度は大切なエア・ジョーダンのカスタムをお任せいただき、本当にありがとうございました。 生まれ変わった相棒と共に、これからも素敵なスニーカーライフをお過ごしください。
あなたのスニーカーも生まれ変わりませんか?
「ソールが加水分解してしまったけれど、どうしても捨てられない」 「人とは違う、自分だけのカスタムスニーカーを作りたい」 「履き心地をもっと良くしたい」
そんなお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度、倉敷市の「いずみ靴店」にご相談ください。 ナイキ、アディダス、ニューバランス、コンバースなど、メーカーを問わず対応可能です。 お客様一足一足の状態とご要望に合わせて、最適な修理・カスタムプランをご提案させていただきます。
ご相談・お見積もりは無料です。 遠方からのご郵送での修理も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
いずみ靴店 岡山県倉敷市
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