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Clarks Nature II(クラークス ネイチャーII)の加水分解修理

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Clarks Nature II(クラークス ネイチャーII)の加水分解修理

Clarks Nature II(クラークス ネイチャーII)の加水分解修理

2025/09/17

【修理レポート】Clarks Nature II(クラークス ネイチャーII)の加水分解修理

 

いつも「いずみ靴店」のブログをご覧いただき、ありがとうございます。

今回ご紹介するのは、常連のお客様からお預かりした、**Clarks(クラークス)のNature II(ネイチャーII)**です。この靴は、その独特なデザインと履き心地の良さから、長年にわたり多くの方に愛されているモデルですね。ご依頼主様も、長年ご愛用されているとのこと。しかし、今回はとても残念な状態でのお持ち込みとなりました。

 

経年劣化の悲劇――加水分解によるソールの崩壊

 

お預かりしたネイチャーIIは、見ての通り、ソールがパックリと口を開けた状態になっていました。アッパーとソールを繋ぐ縫い目から完全に剥離してしまっています。これは、ポリウレタン素材でできたソールが、空気中の水分と反応して劣化する「加水分解」という現象によるものです。

ポリウレタンは軽くてクッション性に優れる反面、製造から数年経つと、このように加水分解を起こしてボロボロになってしまうという宿命を抱えています。特にソールの内部から劣化が進むため、ぱっと見は大丈夫そうに見えても、ある日突然、今回のようにお客様の足元で悲劇が起きてしまうことも少なくありません。

今回のネイチャーIIは、まさにその典型例でした。この状態では、もはや接着剤での補修は不可能です。劣化したソールをすべて取り除き、新しいソールに交換する「オールソール修理」が唯一の解決策となります。

お客様とご相談し、今回の修理は加水分解したソールをVibramソールに交換するオールソール修理で進めることになりました。

 

修理工程:新しい命を吹き込むための分解と再構築

 

 

1. ソールの分解

 

まず、ボロボロになったソールをアッパーから完全に剥がしていきます。この作業は、ただ力任せに剥がすのではなく、アッパーの革を傷つけないように慎重に行う必要があります。特に、ネイチャーIIは出し縫いという特殊な製法で作られているため、縫い目を丁寧にほどきながら、劣化したソールを取り外していきます。

この時点で、靴はアッパーだけの状態になります。次に、この剥き出しになったアッパーに新しい中底を貼り付ける準備をします。

 

2. 新しい中底の取り付け

 

今回使用するのは、革製の中底です。アッパーの形に合わせて、中底を正確に裁断し、専用の接着剤でしっかりと貼り付けます。この中底は、これから新しく縫い付けるソールを支える土台となる非常に重要なパーツです。少しでもズレがあると、仕上がりの美しさだけでなく、履き心地にも悪影響を及ぼしてしまいます。そのため、細心の注意を払って作業を進めます。

 

3. 出し縫いミシンによる縫い付け

 

中底がしっかりと固定されたら、いよいよ出し縫いミシンの出番です。このミシンは、アッパーと中底、そして新しいソールを一緒に縫い付けていくための特殊な機械です。古いソールを取り外す際にほどいた縫い目の穴を使い、一針一針丁寧に縫い進めていきます。

この工程は、靴の耐久性を決める重要な作業です。糸の張りを均一に保ち、縫い目の間隔が均等になるように、集中してミシンを操作します。

 

4. ソールの取り付け

 

今回の新しいソールには、Vibram Gumlite #2668を選定しました。このソールは、非常に軽量でクッション性に優れており、オリジナルのネイチャーIIの履き心地を損なうことなく、耐久性を大幅に向上させることができます。また、グリップ力も高いため、雨の日でも安心して履いていただけます。

縫い付けたアッパーに、Vibramソールを接着し、専用のプレス機でしっかりと圧着します。接着剤が完全に硬化するまで時間を置くことで、強固な一体感を形成します。

 

5. コバの仕上げと磨き

 

ソールがしっかりと固定されたら、コバ(ソールの側面)の仕上げに入ります。今回は、お客様のご要望に合わせて、元の靴の色に近い茶色に着色しました。コバを丁寧に研磨し、滑らかに整えることで、靴全体の印象がぐっと引き締まります。

最後に、アッパーの革を丁寧に磨き上げていきます。長年のご愛用で、少し色褪せていた部分も、専用のクリームで栄養を与え、磨き上げることで、しっとりとした艶が戻ります。また、革がしなやかになり、履き心地も向上します。

 

蘇ったネイチャーII

 

すべての工程が完了し、見事に生まれ変わったネイチャーII

 

古いソールが取り除かれ、新しいVibramソールによって見違えるほどシャープな印象になりました。サイドから見ると、アッパーとソールのバランスも完璧です。お客様にも大変喜んでいただけました。

今回の修理を通じて、改めて靴の修理の面白さと重要性を感じました。 加水分解してしまった靴でも、諦めずに靴修理店にご相談いただければ、このように新しいソールに交換することで、再び履くことが可能になります。

思い出の詰まった大切な一足を、また長く履き続けるお手伝いができて、私もとても嬉しく思います。


この度は、いずみ靴店にご依頼いただき、誠にありがとうございました。 皆様も、ご愛用の靴で何かお困りのことがございましたら、お気軽にご相談ください。

「いずみ靴店」店主 いずみ

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いずみ靴店
住所 : 岡山県倉敷市玉島阿賀崎2丁目6−46
電話番号 : 086-526-3398


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