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【Timberland】加水分解でボロボロになった履き口を本革で再生!ティンバーランド・フィールドブーツの劇的ビフォーアフター|東京都K様の修理事例

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【Timberland】加水分解でボロボロになった履き口を本革で再生!ティンバーランド・フィールドブーツの劇的ビフォーアフター|東京都K様の修理事例

【Timberland】加水分解でボロボロになった履き口を本革で再生!ティンバーランド・フィールドブーツの劇的ビフォーアフター|東京都K様の修理事例

2025/11/28

Timberland】加水分解でボロボロになった履き口を本革で再生!ティンバーランド・フィールドブーツの劇的ビフォーアフター|東京都K様の修理事例


はじめに:名作ブーツを長く愛用するために

こんにちは、岡山県倉敷市の「いずみ靴店」です。

今回ご紹介するのは、遠方・東京都にお住まいのK様よりご依頼いただいた、Timberland(ティンバーランド)フィールドブーツの修理事例です。

ティンバーランドといえば、イエローブーツ(6インチブーツ)が代名詞ですが、今回お預かりしたフィールドブーツもまた、アウトドアシーンからストリートファッションまで幅広く愛される名作中の名作です。堅牢なソール、防水性の高いアッパー、そして都会的なデザイン。履き込むほどに足に馴染み、味わいが増していくのがこのブーツの醍醐味です。

しかし、どんなに頑丈なブーツであっても、避けられない「弱点」が存在します。それが今回フォーカスする**「履き口(トップライン)のクッション部分」**です。

K様の大切なブーツも、この履き口部分に深刻なトラブルを抱えていました。
「ソールはまだ元気だし、アッパーの革も良い状態。でも、履き口だけがボロボロと崩れてきてしまい、靴下や部屋を汚してしまう……」

そんなお悩みを抱えているティンバーランドユーザーの方は、実は非常に多いのではないでしょうか? 今回は、そんな「あるある」なトラブルを、職人の技術とこだわりの素材選びで、オリジナル以上にタフで美しく蘇らせる工程を、余すことなく徹底解説いたします。


第1章:なぜボロボロになるのか?「合成皮革」と「加水分解」の真実

修理の工程に入る前に、まずは「なぜこのような状態になってしまったのか」という原因を紐解いていきましょう。

1-1. 経年劣化の正体

お預かりしたブーツの履き口部分を見てみると、表面の素材がひび割れ、ベタつき、指で触れるだけで黒い粉のようにポロポロと剥がれ落ちてしまう状態でした。

これは**「加水分解(かすいぶんかい)」**と呼ばれる化学反応による劣化現象です。

多くのスニーカーやブーツのパッド部分(スポンジを包んでいる表皮)には、コストパフォーマンスや加工のしやすさから「合成皮革(PUレザーなど)」が使用されています。合成皮革は、織布などのベース生地の上に、ポリウレタン樹脂などを塗布して革の質感を模した素材です。

1-2. 日本の気候と加水分解

このポリウレタン樹脂には、「水分と反応して分解してしまう」という宿命的な性質があります。特に日本のような高温多湿な気候は、合成皮革にとって過酷な環境です。

  • 空気中の水分

  • 着用時にかく汗

  • 保管場所の湿気

これらが時間をかけて樹脂の結合を徐々に破壊していき、ある日突然、ベタつきや剥離といった症状として現れます。これは「製品の寿命」として設計されたものであり、どんなに丁寧に履いていても、合成皮革である以上、数年〜10年程度で必ず訪れる避けられない劣化なのです。

K様のブーツも、アッパー本体の「本革(ヌバック)」部分は非常に堅牢で美しい状態を保っていましたが、履き口の「合成皮革」部分だけが寿命を迎えてしまっていました。


第2章:カウンセリングと素材選びへのこだわり

「ボロボロになった部分を直したい」
そのご要望に対し、当店では単に元通りにするだけでなく、**「二度と同じ悲劇が起きないようにアップグレードする」**提案をさせていただきました。

2-1. 合皮から本革へ:永続性へのシフト

修理において再び合成皮革を使ってしまっては、数年後にまた同じ加水分解のリスクを背負うことになります。そこで、今回は耐久性に優れ、加水分解の心配が一切ない**「本革(天然皮革)」**への張り替えをご提案しました。

本革は、手入れさえすれば数十年単位で持ちこたえます。また、使い込むほどに艶が出たり、柔らかくなったりと「経年変化(エイジング)」を楽しむことができます。劣化を「汚れ」と感じる合皮に対し、変化を「味」として楽しめるのが本革の最大の魅力です。

2-2. 色合わせの難しさと最適解

ここで一つの課題が浮上しました。「元の色」の特定です。
劣化して変色・剥離してしまった状態では、新品当時の正確な色味を判断するのが非常に困難です。

そこでK様にご連絡を取り、ヒアリングを行いました。
「今、残って見えている部分の色が、ほぼ元の色だと思っていただいて大丈夫です」
という、色味に関するニュアンスを含んだご回答をいただきました。

ティンバーランド特有のウィート(小麦色)や、アッパーのブラウンとの相性。そしてK様の記憶にある色味。これらを総合的に判断し、今回は**「カラメル色」の牛革**を選定いたしました。

このカラメル色は、フィールドブーツのアウトドアテイストを損なわず、かつ新品の時のような明るさと清潔感を取り戻すのに最適なトーンです。少し赤みを含んだブラウンは、履き込むことで深い飴色へと育っていく楽しみも秘めています。


第3章:職人技が光る「解体」と「下準備」

修理の方針が決まれば、いよいよ作業開始です。しかし、靴修理において最も神経を使うのは、実は「縫う」ことよりも「解く(ほどく)」ことにあると言っても過言ではありません。

3-1. 慎重な解体作業

まず、劣化したスポンジ部分を本体から切り離す必要があります。
カッターやリッパーを使い、元の縫い糸を一本一本丁寧に切っていきます。ここで重要なのは、「靴本体の革(アッパー)を絶対に傷つけないこと」、そして**「元の針穴を壊さないこと」**です。

後述しますが、再縫製する際は「元の針穴」を拾って縫うことで、革へのダメージを最小限に抑え、仕上がりを美しくします。そのため、解体作業は力任せではなく、外科手術のような繊細さが求められます。

3-2. スポンジの救出と補修

縫い目を解くと、中からクッション材であるスポンジ(ウレタンフォーム)が現れます。幸い、今回のケースでは中のスポンジ自体はまだ弾力を保っており、再利用が可能でした。
もしスポンジまで劣化して粉々になっていた場合は、新しいスポンジを詰め直す工程も加わりますが、今回はオリジナルのフィッティングを変えないよう、元のスポンジを丁寧にクリーニングして使用します。

3-3. パターン作成と革の裁断・漉き加工

取り外したボロボロの表皮を広げ、それを型紙(パターン)として新しい「カラメル色の革」を裁断します。
ここでプロの技が必要となるのが**「革の漉き(すき)」**です。
用意した本革はそのままでは厚みがありすぎて、折り返して縫う際にゴワついてしまいます。特にカーブがきつい履き口部分は、革が厚いとシワが寄りやすく、足当たりも悪くなります。

専用の革漉き機を使い、革の端(縫い代部分)だけを紙のように薄く加工します。これにより、折り返した時の厚みが均一になり、既製品のようなスマートな仕上がりを実現します。


第4章:難易度MAXの縫製!「八方ミシン」の出番

新しい革でスポンジを包み込み、接着剤で仮止めを行ったら、いよいよ最大の山場である「縫製(ステッチ)」です。

4-1. 通常のミシンでは縫えない理由

一般的な家庭用ミシンや、服を作るための工業用ミシン(平ミシン)では、靴の履き口を縫うことはできません。なぜなら、靴は「立体物」であり、特にブーツの履き口は筒状になっているため、平らなテーブルには置けないからです。

無理に平らにしようとすれば、靴の形が崩れてしまいますし、そもそもミシンの針まで届きません。

4-2. 靴修理の相棒「八方ミシン」とは

そこで登場するのが、当店が誇る**「八方(はっぽう)ミシン」**です。
このミシンは、その名の通り「八方のあらゆる方向へ縫い進めることができる」特殊な機構を持っています。

最大の特徴は、**「筒状の極細のアーム(腕)」**です。
この細長いアームの先端に針がついており、ブーツの筒の中にアームを差し込むことで、立体的な形状のまま縫うことができるのです。靴修理店にとってなくてはならない、まさに心臓部とも言える機材です。

4-3. 「元の穴」を追う神業

ミシンがあるからと言って、簡単に縫えるわけではありません。
今回のミッションは、「新しく張った革」と「元の靴本体」を縫い合わせること。
ここで最も重要なこだわりは、**「元々空いていた針穴を一針一針確実に拾って縫う」**ことです。

もし元の穴からズレて新しい穴を開けてしまうと、革の強度が落ちて裂けやすくなる上、見た目もガタガタになってしまいます。「ミシン目」というデザインを美しく保つためにも、コンマ数ミリ単位のコントロールが必要です。

八方ミシンのハンドルを手動で回し、一針落とすごとに針先を確認し、足元のペダルで送りを微調整する。
「タタン、タタン……」
機械任せの高速縫いではなく、職人の目と手足が連動した、息を止めるような集中力が続く作業です。
特にカーブの部分や、革が重なって分厚くなっている部分は、慎重に慎重を重ねて針を進めました。


第5章:修理完了・劇的ビフォーアフター

全ての縫製が終わり、余分な糸を処理し、全体をブラッシングして仕上げます。

5-1. 生まれ変わった履き口

完成したブーツをご覧ください。
以前のボロボロでベタついていた履き口は跡形もなく、そこには上品な艶を湛えたカラメル色の本革が鎮座しています。

  • 質感: 合成皮革のようなビニールっぽい光沢ではなく、革本来の温かみのある質感。

  • 強度: 引っ張っても擦ってもビクともしない、強靭な銀面(革の表面)。

  • 色味: アッパーのヌバックレザーとのコントラストが美しく、まるで「最初からカスタムオーダーだった」かのような自然な仕上がりです。

5-2. 本革ならではの機能性

見た目だけでなく、機能面でも大きく向上しました。
本革は吸湿性と放湿性に優れているため、足首周りの蒸れを軽減してくれます。また、履くたびにK様の足首の形に合わせて革が馴染んでいくため、履き心地も日に日に良くなっていくことでしょう。
何より、「加水分解しない」という安心感は、これからも長くこのブーツを愛用していく上で最大のメリットとなります。


おわりに:靴を直すということ

今回のご依頼主であるK様には、
「これでまた履いていただけますね」
という言葉とともに、生まれ変わったTimberlandをお返しいたしました。

靴は、単なる移動の道具ではありません。
その靴を履いて歩いた場所、見た景色、過ごした時間。そうした「記憶」が刻み込まれているパートナーです。
合成皮革の劣化で「もうダメか」と諦めて捨てる前に、ぜひ一度ご相談ください。

今回のケースのように、パーツを「本革」にアップグレードすることで、新品の時よりも高品質な、世界に一足だけのブーツへと進化させることができます。

いずみ靴店について

当店は岡山県倉敷市に工房を構えておりますが、今回のように東京都をはじめ、全国各地からの配送による修理ご依頼を承っております。

「近くに信頼できる修理店がない」
「他店で断られてしまった」
「大切な靴だから、実績のある店に任せたい」

そんな想いにお応えするため、LINEやメールでの事前カウンセリングも丁寧に行っております。写真をお送りいただければ、修理の可否やお見積もり、使用する素材のご提案などを詳しく返信させていただきます。

あなたの足元を支える大切な一足。
その寿命を延ばし、新たな魅力を吹き込むお手伝いをさせてください。


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(※ここにLINEや問い合わせフォームへのリンクを配置)

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